2024年3月4日月曜日

好きな詩人 淵上毛銭 

 これからは少し個人的な思いも気楽に書いてみたいと思う。  


 子どものころから詩がすきだったが歳を取ってからますます詩が好きになった。

 若いころにもっていた詩を特別なもの として大切に思う気持ちは、

 病気してから、消えてはいるが

 それでも詩に代わるものがほかにあるとは思えない。


 ここ数年、淵上毛銭の詩が気に入っている。

 なんともいえないが救いを感じる。おおげさではなく…。


   柱時計  淵上毛銭

.ぼくが

死んでからでも

十二時ががきたら 十二

鳴るのかい

苦勞するなあ

まあいいや

しつかり鳴って

おくれ

---------------------------------

 自分の死後を夢想してこのような詩をかくのは楽しかっただろうなあ。


 ちなみに淵上毛銭は若くして結核性股関節炎(カリエス)になり、病臥の生活を余儀なくされた人である。絶望の日々にあって自分の死後を夢想することに楽しみを覚えたことは、それでもやはり一つの救いであったと思う。

 

2023年9月14日木曜日

四季の森社ホームページ  https://sikinomorisya.com

 四季の森社のホームページができました。

https://sikinomorisya.com

このページでの新刊紹介などはホームページに移ります。

ぜひご覧ください。


2023年7月2日日曜日

現代こども詩文庫 5 戸田たえ子詩集

 



現代こども詩文庫 5 戸田たえ子詩集

発行日 2023年6月25日

著者 戸田たえ子

企画・編集 菊永 謙 カバー絵 大井さちこ

四六判並製本文192ページ

発行所 四季の森社  定価1320円(本体1200円+税)

 ISBN978-4-905036-36-4 C0392


戸田たえ この既刊詩集、未刊作品からのアンソロジーに加えて特別に父藤原義衡の戦記『私のビルマ戦線』を抄録する。解説に畑島喜久生、はたちよしこ。菊永謙。


著者戸田たえこ略歴

一九四八年 愛媛県大三島町(現・今治市)に生れる。中学のころから詩を書き始め、児童文学誌「ぷりずむ」秦敬主宰の同人になる。一九八七年 父のビルマ戦記「私のビルマ戦線」を出版する。著書に詩集『しずかなる ながれ』(近代文藝社)、詩集『夕日は一つだけれど』、詩集『ききょうの花』。


『戸田たえ子詩集』から


  夕日は一つだけれど


山に のぼると

また

山が みえる


山って

いくつあるのだろう?


夕日が しずむ山は

一つだとおもっていた


ずっと

そうおもっていた


みんな しっているのかな……


ゆかちゃんに おしえたい

としくんにも おしえたい


夕日は一つだけれど

山は

たくさん

たくさん

あるってことを─



  ぐい実を食べると


小鳥のように

ぐい実の枝には とまれないけれど

高い空も とべないけれど

ぐい実を食べると

小鳥のきもちが

ちょっぴり わかる


ことしも

ぐい実を食べながら

小鳥になった気分!


わかります?

この気分!?


─いつか

  小鳥と 話してみたい

  わたしのことも

  小鳥のことも

  どっちもどっち

  わかり合いたい─

                注 ぐい実……ぐみの実のこと



  母の声


海が見える

みかん畑にかこまれた小高い丘に

父母の墓はある


墓のまわりには草が生え

白い小さな花が咲き

たがいに ささえ合い

風にゆれていた


一瞬

─草も生きとるんじゃけん

  ひかんでええよ

と 母の声が聞こえ

そのままにして 手を合わせた


気づくと

どこかで小鳥が鳴いて……


雲の流れる空の下

この世の私は

やわらかな早春の風と

みかんの木々の

葉ずれの音に見送られ

細い坂道を下った


2023年6月21日水曜日

『猫がゆく鎌倉』 雪奴 

 『猫がゆく鎌倉』


2023 年6 月10 日 初版第一刷発行

著 者  雪奴(ゆきやっこ)

発行所  四季の森社

ISBN978-4-905036-35-7 C0776

B5変形 並製 本文オールカラー56ページ

定価1320円(本体1200+税10%)


古都鎌倉を猫が案内する絵本

帯文から

鎌倉の路地裏まで、よく知る小町猫たちの道案内。

粋なお店や隠れ家、隠れパワースポットへ、ニャーンとご招待!

小町通りの各名店の看板ねこたちがピアノやチェロを

奏でながら、道行くあなたを招く一冊。すてきな猫たちが満載!!


著者  雪奴(ゆきやっこ)

日本大学美術学部デザイン科入学。

早くからファッション関係の仕事でファッションイラストルポを行う。

絵を学ぶため渡仏、同時に雑誌ルポの仕事。

フランスで前後して2匹の猫を育てあげ共に帰国。

アニマルグッズ会社で商品企画をする。猫に関しての個展2回“ 猫と少女” “ 巴里の香り”

グループ展示数回。著者に旅の絵本“ パリッ子猫のフィフィ” らくだ出版。


もくじ

1 猫の道と大佛次郎別邸

2 若宮大路のじゅうたん店

3 鎌倉市場

4 鎌倉の海

5 鶴岡八幡宮

6 荏柄天神社

7 小町通りへようこそ

8 若者の街

9 吉兆庵美術館

10 隈 研吾のBAM

11 建長寺の虫塚

12 蔵に住む人

13 小売店とレストラン

14 鎌倉の朝の小さな生きもの

15 杉本寺

16 ベランダより朝焼けの鎌倉の山と空

17 看板猫

18 そぞろ歩き小景

19 鎌倉彫の小町家族

あとがき


2022年9月5日月曜日

ざわざわ─こども文学の実験 第7号 特集 矢崎節夫

 


ざわざわ─こども文学の実験 第7号

特集 矢崎節夫

2022年9月1日 発行

編集 草創の会  発行所 四季の森社

 A5並製 468ページ 定価 1320円(本体1200円+税10%)

 ISBN978-4-905036-33-3 C0095


矢崎節夫特集

児童文学者、童謡作家であり金子みすゞを再発見、現代に復活させた矢崎節夫を特集する。矢崎節夫がいかにして童謡や絵本、紙芝居、童話、さらに童謡史研究などを書き続け、児童文学の世界を歩んで来たか、そのさまざまな作品群と共に、その軌跡を辿る。


執筆者

あまん きみこ、いとう ゆうこ、岩田早苗、呉菲(ウー フェイ)、内田麟太郎、おがた えつこ、織江りょう、菊永 謙、草場睦弘、佐相伊佐雄、杉本深由起、高畠 純、野呂 昶、林 瀬那、武鹿悦子、宮川健郎、矢崎節夫、山本純子、吉田定一、他多数


主要目次

特集 矢崎節夫

童謡アンソロジー

矢崎節夫の童話

矢崎さんのこと

〈童謡〉をめぐって

〈絵本〉をめぐって

〈矢崎節夫の作品について〉

矢崎節夫と〈金子みすゞ〉及び〈童謡史〉研究をめぐって

矢崎節夫〈ある日 ある時〉

会員の童謡、詩作品

その他


2022年6月24日金曜日

現代こども詩文庫 4 田代しゅうじ詩集


 現代こども詩文庫 4

 田代しゅうじ詩集

2022年7月15日 発売

企画・編集 菊永 謙 

カバー絵 大井さちこ 

発行所 四季の森社 

ISBN978-4-905036-32-6  C0392

定価 本体1200円 税120 合計1320円

田代しゅうじの既刊詩集などからの選集と創作民話、近年のエッセイを収録。作品論詩人論解説に小林雅子、三谷恵子、菊永 謙。


著者 田代しゅうじ


1937年 鹿児島県薩摩川内市に生れる。

1978年 児童文化の会(井野川潔、早船ちよ)「童

詩童謡研究会」に入会する。

1982年 「少年と海」「少年と猫」の2作品が「子

ども世界」(児童文化の会)童詩童謡賞を受賞する。

1985年 詩集「少年と海」にて第16回埼玉文芸賞

児童文学部門賞を受賞する。

2006年 詩集「野にある神様」てらいんくより出版。

2017年 詩集「ともだちいっぱい」を四季の森社

より出版。第22回三越左千夫少年詩賞を受賞する。

日本児童文学者協会会員、詩誌「みみずく」同人。草

創の会「ざわざわ」会員。茨城県取手市在住。




田代しゅうじ詩集から


 方言


みんな方言でかたろう

ふるさとの人ばっかり

一年に一度のふるさと会

おもいきり方言でかたりもそ

よかが

よかが

こげんうれしこたなか

はんも

おいも

よかがよかが

みんなないでんかたらんけ

よかが

よかが

やまいもをほらんなよか

よかが

よかが

みんなかごしまじゃ

みんなよかひとじゃ

よかが

よかが

他人のわるぐちやいわんほうがよか

他人のこつもいわんことじゃ

よかが

よかが

方言なよか

方言なよか

           ないでん=何でも

           やまいもをほらんな=酒を飲んでくだをまくこと

           いわん=云わないこと




西郷どんがうさっがいきやった


こんばばが、とうぐらいのころじゃった。

ちょうど、といいれも、おわつたころ

外のえんがわに、腰かけて、

おとっちゃんとかたいかた

からいもが、ゆであがつとを

待つちょらいた

「おいどんな、えんがわで、わらぞいを

つくちょった」

西郷どんが、じっと、みちょらいたが

「そげん、ちんかてで、みごちぞいが

 でくんね、おいどんに、いっそくうってくれ、」

西郷どんな、さいふの中らぜにをだしやった

「おいどんな、うれしゅして、ぜんないらんち、ゆうたが、西郷どんが

ふとか手で

とっちょけ、とっちょけち、ゆわいたでもろた、どっさいじゃった」

西郷どんな太か人じゃった

「ばあちゃん、ほんのこで、西郷どんじゃっど、西郷どんのみたと、ほ

んのこて」

「こん白髪ばばが、嘘をいゆもんか

おいどんが、編んだわらぞうりを

踏んで、庵の宇都山に、うさぎがいにいきやった」

それを聞いた、少年は自分で見たように得意になった

明治二二年生まれの少年の祖父を生んだ人

少年のひいばあちゃん

その話を聞いたのは昭和二二年

少年は十歳

ひいばあさんは八二歳か八三歳

西郷どんな太か人じゃった

昔の家は戸口のうつくわれかかった引き戸を開けて

「だいか、おいけ、おったけ」

暗い家の中を、じろりとみまわし

「おいどんな、西郷じゃ、こんからいもをゆでて、くれんけ」

西郷どんな、持って来た袋の中からからいも、どさち、だしやった

からいもを、ゆでてやると

「半分でよか、こんからいもはおいどんと、犬のめしじゃ」

半分はみんなで食べろといって残りの半分を大きな袋にいれて背中にせ

おおうと

「おおきにね、あいがとうございもした」

犬を連れて、庵の宇都山にうさぎがりにのぼって、いきやった

ひいばあさんは

「そげん、えらか人やったち

おいどんなしたんにゃった」

あの高い縁側に、ちょこんと腰かけてからいものゆであがったとをまっ

ちょいやった

こけ、二度ばっかりきやったね

ひいばあさんは、竹の皮で草履をつくっていた

長生きしたひいばあさんの草履をふんであるくと、長生きするちゅう

て、みんな

こうてくれた

草履は一〇足ずつ丸い輪にして、天井につるしてあった

こげな、昔のかぞえかたを教えてくれた いいちく、でえちく、ちくまが、

こんぶ

それ、また、こきゅ、たろう、じいんがのき

これで一〇じゃ

少年は

ひいばあさんが、いつまでもいきていてほしいと思った

「おいげえん、ばあさんな、西郷どんのしっちょらっど」

と、大きな声で自慢のすいごたった

あのばあさんは、今、庵の宇都山のいりぐちにある、ちいんかはかのな

かにねむって、おいやっど。

俗名 田代イロ

そして、あの少年は、今頃

風になって、故郷のやまを

思いきりかけまわっています

きっと


  方言の説明

①うさっがいきやった=うさぎ狩りにきました

②といいれも=とり入れも

③かたいかた=語り合っていた

④からいもが=さつまいもが

⑤ゆであがっと=ゆであがると

⑥わらぞい=わらぞうり

⑦そげん=そんなに

⑧ちんかてで=ちいさなてで

⑨みごちぞいが=みごとなぞうりが

⑩でくんね=できるね

⑪ぜんないらん=お金はいらない

⑫とっちょけ=とっておけ

⑬ゆわいたで=云われたので

⑭どっさいじゃった=たくさんだった

⑮ほんのこて=ほんとうに


2022年5月27日金曜日

現代こども詩文庫3 畑島喜久生詩集

 


現代[s1] こども詩文庫 3

 畑島喜久生詩集

2022年510 日 発売

企画・編集 菊永 謙

カバー絵 大井さちこ

発行所 四季の森社

ISBN978-4-905036-31-9  C0392

定価 本体1200円 税120 合計1320

 

著者 畑島喜久生

1930年長崎県対馬に生まれる。

小学校教師として働く。こども本位の児童詩教育を目指し活動。『現代児童詩』若干、「これからの児童詩教育」など児童詩関連の著作多数。小学校教師定年退職後は白百合女子大、東京保育専門学校等に勤務しながら日本児童文学の編集にも関与。少年詩の一層の発展を目指し、「少年詩の学校」「少年詩の教室」など発刊。「畑島喜久生詩集」など少年詩関連の著作多数。

 

畑島喜久生の既刊4冊の少年詩集などからの選集と近年のエッセイを収録。作品論詩人論解説に内田麟太郎 、中上哲夫、藤川幸之助、須田慎吾、菊永 謙。

 

畑島喜久生詩集から

 

   スズメを信じる

 

かんがえてみてください

人間にとって

いちばん身近な鳥といえば

スズメではないでしょうか

 

周(まわり)中にいっぱいいる

だから忘れている(忘れられている)

 

昔 何十年前かまで

わたしたちの国にも

「大衆(たいしゅう)」と呼ばれている人たちがいました

毎日毎日の暮らしのことしか考えない大勢の人たちが

それが 暮らしが豊かになっていつの間にか消えていた(いった)

そしていま不景気で

自由だけがいっぱいあって

貧乏になるのも自由 自殺するのも自由‥‥‥

 と

それが

─その他大勢

ではなくテンデンバラバラに生きているのです いまのいまは‥‥‥

 

ところで

あの人間にとっての

あるかなきが如くにたくさんいたスズメたちはどうしていますかね

中国から流れてくる大気汚染にも耐えて元気でいられるか─

いるか

いないか

いないか

いるか

わたしはいると思います

人間みたいに「新中間層」になったりはしていないので

「鳥」としての「大衆」の名のままでいると‥‥‥

わたしは そのように

「自然」の中での

「人間」にとって

いちばん身近かであった「鳥」のことを深く信じていますので‥‥‥


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